「abさんご」と書いて「えーびーさんご」と読めばよいのでしょうか?
黒田夏子さんの芥川賞受賞作品の紹介です。
難解、読みづらい、等々話題になったのは、もうずいぶん前のこと。
今さらですが、読んでみました。

こんにちは。
かずひろ@印刷屋さんです。

おススメしたいのですが、正直に言います。
いくつかの理由からお勧めできません(それなら、紹介するな)。
かなり読むのに苦労した小説でした。

abさんご


「abさんご」を人にお勧めできない理由

ひと言でいうと、「大変に読みづらい小説だから」ということになります。
実にチャレンジングな試みだとは思うのですが・・・
装釘は非常にキレイで品良く作られているので、とても残念です。


「abさんご」は大きな話題にもなりましたが、横組みの小説です。
一方、同時に収録されている三作は縦組みです。

この両者を成り立たせようという試みですから、右から開く縦組みと左から開く横組みが一つの本に収まっているということになります。

印刷工程から見たら、頁の面付で多少とまどうことがあったかもしれませんね。

ただ、このこと自体はたいして読みづらさにはなりません。

1ページの中に混在している訳ではありませんから。


「読みづらさ」の要素

いくつかあります。

  • 横書きである
  • 平仮名が多い(漢字が開かれている)
  • 片仮名が使われていない(外来語も平仮名)
  • 登場人物や物の名前が出てこない
  • 一文が異常に長い
  • 独特の文体

その他にもありますが、主な理由は以上です。

要するに、「abさんご」が読みにくいのは、「今までに読んだことがないタイプの小説」だからかもしれません。

しかし、じゃあ、慣れるまで読んでみようと思うかどうかは別の問題。

様々な理由による読みづらさ以外に、じつはコレといった内容が無いと思うのです。

なので、読み進めるのが苦痛で、再読するなどあり得ません。

この文章に酔える方にとっては、とっても良い小説だと思うのでしょうが、私は無理でした。


なぜ、おススメできないのか

「abさんご」は読むのに結構時間がかかるのですよ。
登場人物を掴むのさえ一苦労です。
読み返しつつ、確認しないと誰が誰だか分からなくなります。

さらに、言葉遣いや文体にも苦労させられます。
読めない漢字もチラホラ。

意味を取るのに何回か読みなおす必要があるので、余計に時間がかかります。

しかも、そうして読んで取った意味が正しいのかどうか?
イライラしますね。

そう、話の流れに乗れないのですよ。
つっかえつっかえしながら読み終えても、内容はほとんど頭に残りませんでした。
私自身の読解力不足を差し引いても、あまりに何も残っていません。

結局、「abさんご」が何を意味しているのかも分からずじまい。

ここが、「abさんご」をお勧めしない最大のポイントです。

多分ですが、この作品、時間の無駄と感じる人多いんじゃないかな?と思うのです。
短い作品ですので、それほど時間はかからないのですが、それでもねえ。

あと、本を買ったお金も無駄に・・・



ただ、たった一つ良かったと思えたことがあります。

「やっぱり、日本語は縦書きがいい」
このことを再確認できました。

黒田さんは、文学臭うんぬんということを仰っておられましたが、違うかな。
縦に書かれるように出来上がっている文字なので、やはり縦書きが読みやすいです。

これは、世の中で横書きが主流になっているとかは関係ないようです。

日本語の縦書き、やっぱり美しいです。


表題作以外の三作品について

すみません。
こちらも、同様におススメできません。


「毬」「タミエの花」「虹」という作品です。
こちらは「タミエ」という少女の回想?小説。
窃盗をはたらき、淡々と人をだまし、赤ん坊を殺した、らしいことは分かります。

このタミエという少女、いじめにあっているようで不登校児でもあります。
が、この少女が「淡々と」犯罪を犯すさまを「淡々と」描くという、かなり怖ろしい小説です。

う~ん、犯罪小説ですな。
26歳でこれを書いたという黒田夏子さんに驚きです。

もしかして、ちょっと病んでいるのかな?
と、思わずにはいられません。

50年ほど前の作品ですが、いろんなことを考えてしまいました。


後味の悪さだけが残る

「毬」「タミエの花」「虹」の三作品は幸いにして縦書きです。
文章が多少古臭くはあるものの、読みづらさはさほどありません。
が、やはり文体は特徴的。

これが、この黒田夏子さんの持ち味なんでしょうね。


さて、小説を読んでみての感想なのですが、「結果、後味の悪さだけが強烈に残る作品」です。

(以下、ネタバレ)
最期の1ページで、唐突に自分の弟(赤ん坊の)を川に突き落とす描写が出てきます。
しかも事故ではなく、故意にだった、と回想します。

完全に犯罪者ですね、この「タミエ」という少女。

時に、少年少女が世を騒がせる事件を起こすことがありますが、そんなことを思い起こしてしまいました。

という訳で、この小説は読む人を選ぶと思います。
まあ、あえて読まなくてもいい作品といえますね。

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